44人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
人目につかぬ高さまで飛び、そこから魔王城を目指す彼、眼下に大地を見下ろしながら優雅に飛んでいる。
出そうと思えばスピードは出せるし、骨属性によって空を飛ぶことに適した姿になれるが、それをする気は無いようだ。
しばらく飛んでいると、彼は溜め息を吐いた。知属性によって常時流れ込んでいる知識によると、廃村のあった国が愚かなことをしようとしているからだ。
この国は魔族を恐れ、悪と決めつけ、対抗するために民から税を搾り取っている。
更に、この国の特産である魔鉱石、魔力を流すことで特殊能力を持つ武器に変わる特殊な鉱石があるのだが。
この魔鉱石は採掘された物ではなく、製造された物であり、その製造方法は人には決して言えないような内容であった。
それを採掘された物と偽って、他国へも輸出している。そんな国が攻められてもいないのに、魔族への対抗手段として勇者を召還する案を進めているのだ。
しかも数人の魔力で事足りる物を、多くの人命と生き血を使おうと考えているようだ。この国の業の深さを知っている彼は、犠牲者と民を哀れみながら、空を飛ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!