第四章

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記憶の始まり、 俺は人よりも遅かったのかもしれない。 あんたはまだ覚えているだろうか‥ あの日の事を、 俺は覚えている、あの日こそ俺の記憶の始まりだった。 あの日は、暗い空から雨が降り注いでいた。 狭くて薄汚い路地に俺は薄い衣を纏って座り込んでいた。 冷たい雨水が頬を伝う中、俺の耳は微かな足音を捉えた。 やがてその足音は近づいてきて、俺の目の前でそれは止まった。 『小僧、そんな薄っぺらい衣じゃあ風邪ひくぜ? 』 これが、あんたとの最初の出会いだった。 そう問いかけるように言うと、自分が纏っていたデカくて分厚い衣を俺に被せてきた。 『どうだ、あったけぇだろ? 小僧、それお前に貸してやるよ。 気が向いたら、俺の下に返しにこい。』 そう言い、あんたは俺の頭を軽く手で叩くと立ち上がり、俺の下を離れて行った。 『小僧、 外は広いぜ。 こんな狭い所じゃあ、楽しくねぇぞ。 自分の足で一歩踏み出せ。 そうすりゃあ、世界も広がる。 そこからがお前の始まりだ。』 その言葉を言い残すと、俺の視界からあんたは消えていった。 被せられた衣には、まだ温もりが残っていた。 未だにその時の温もりは俺の芯に焼き付いたいる。   
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