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「…どこかで聞いた話」
思わず自嘲的に鼻で笑ってしまう。
自分の惨めさを思い出して自然と出た笑いだ。
未練など跡形もなく消えてしまったが、忘れた訳ではない。
テーブルに広がった包み紙を雅はぐしゃりと握り潰す。
「依頼内容は?」
雅が問うと秋は造形の整い過ぎた顔を上げ、にっこりと笑う。きっと彼は雅の色々な心の内を全て見透かしているのだろう。
初めて会った時からそうだったように。
「芦野裕貴、荒瀬美里両名への報復」
静かに言い放つ秋の声はどんなオペラ歌手の歌声よりも心地良く、どんな輝きを放つ星達よリも冷たく響いた。
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