《お嬢さんいらっしゃ~い》

10/32
前へ
/38ページ
次へ
リサ 「何やってるの!」 鶴見 「(安原に)僕、柔道の達人なんかじゃないんです」 安原 「じゃあ何?」 鶴見 「それは、重労働の職人」 安原 「さっき、あの子が言ってたのは?」 リサ 「その人は、国体に出たのよ!」 安原 「ほー、国体」 鶴見 「ノンノンノン、国体じゃなくて、国道。今、国道を作ってます」 リサ 「国体の実力みせてやれ!」 美智子 「早くして貰える?」 安原 「あの子が国体って言ってんぞ」 鶴見 「え? アイツ? アイツ、ちょっとココ(頭)がおかしいんです」 リサ 「鶴見さん、黒帯の力見せて!」 安原 「見せて」 鶴見 「いやはや、苦労してるんです。ちょっと失礼」 鶴見、リサに近寄る。 リサ 「何してるのよ。早くやっつけてよ」 鶴見 「分かってるよ。しかし、弱いヤツを相手にしても、ただの弱い者イジメになる。それは武道家として出来ない」 リサ 「そんな事言ってる場合じゃないでしょ! 相手は泥棒なのよ」 鶴見 「そもそもそこが間違ってない? どう見ても、俺らより裕福そうだけど」 美智子 「(鶴見に)まだ?」 鶴見 「(美智子に)もうちょっと」 安原 「(美智子に)行きましょうか」 美智子 「そうね。こんな事してる場合じゃないわ」 美智子と安原、玄関から退場。 リサ 「あっ、逃げた!」 鶴見 「もういいって」 リサ 「でも」 鶴見 「あれ以上やってたら、ヤツの命は無かった」 リサ 「何もしてないジャン」 鶴見 「素人はコレだから困る。俺の技見てなかったの?」 リサ 「だから何もしてないジャン」 鶴見 「そうか、電光石火だったからな。見逃したか」 リサ 「だから何もしてないジャン!」 鶴見 「今度は見逃すなよ」 リサ 「もういい」 今井、管理人室から登場。 金ピカのド派手ジャケットを着ている。 今井 「騒がしかった様ですが、何かありました?」 リサ 「泥棒ですよ」 今井 「泥棒? どこですか?」 リサ 「逃げちゃいました」 鶴見 「あぁ、俺に恐れおののいてな」 今井 「そうですか。で、被害は?」 鶴見 「大丈夫だ。ただ、相手の肋骨二、三本いったな」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加