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第1話「能力者」
ここは帝国。『世界の修正』が起きてから
およそ1500年のときが経過していた……。
「諸君、準備はよろしいかい?」
『はっ、総統!』
なんでわざわざ盗賊ごときにまで
俺たちが出なきゃいけないんだ……?
「白鎖中佐、準備はよろしいか?」
「はいはい、総統」
不調であれば休んでるし不調だから休みたいと
言っても通用しないのに聞く必要あるのか?
「よろしい!」
俺の肩をバンバンと叩く総統。
そんなことをするせいで大佐達に
白い目を俺は向けられるんですが……
「では、任務にかかれ! 油断するな、盗賊といえども『能力者』だ」
……能力者がいるから俺たち『帝国警備対特別能力部隊』が出るんでしょうが。
『はっ!! 帝国に光あれ!!!』
お決まりの文句を口にして部屋を後にする奴ら。
本当にご苦労様だな。
「白鎖、お前も行かないか」
「鳳凰総統……師匠こそ、総統になってから怠けすぎやしませんか?」
そう、この鳳凰総統こそが俺の上官であり、能力の師匠である。
能力とは生まれ持った……要は神秘的な力だ。
「やれやれ、部隊の中佐になってもまだそれか」
「ええ、俺は死ぬまでこれです」
話を打ち切って部屋を後にする。
――コラセス家
自身の能力で財を成した貴族の一族。
そして、今回の盗賊団「形無きもの」のターゲットでもある。
「形無きもの」は帝国をお騒がせしている成功率100%の盗賊団。
こっちもまた自身の能力でいくつもの難しい盗みを成功させている。
「面倒だな……」
今回の目的は「シルクの涙」と呼ばれる絹のように純白な宝石だという。
とりあえず与えられた警備場所に向かうと
それらしいガラスケースに入った真っ白な宝石が輝いている。
「おお、総統が推薦した凄腕の能力者とは君かね」
「はっ? い、いや」
「はは、謙遜せんでいいよ? 白鎖中佐」
「そ……総統」
はめられた。いや、気付いたところで権力によって俺の敗北は確定しているが……。
「君の任務は最後の砦、重要だぞ」
「して、総統はどちらへ?」
「私はまだ書類が残っているのでな、まあ君たちなら問題あるまい」
一方的に理由と安心感を与えて去っていく総統。
……やれやれ、面倒なことになった。
ため息を吐いても現状は変わらないので俺は夜まで待つことにした。
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