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――誰かの詠唱と共に鎖から男の感触が消えた。
男は、まるで縄抜けのように鎖を脱出していた。
「ヴァードット、大丈夫?」
そこには一人の少女、白いローブに白いマフラー……確かに寒いが盗賊らしからぬ格好だ。
長い髪といい、ここにいなければどこかのお嬢様みたいな存在だった。
「……寒いなら盗みにくるなよ」
「あら、寒さに負ける盗賊なんてナンセンスです」
「じゃあ、その格好で来るな。戦う気がうせる」
「むう、こんなに可愛い女の子と会えたんだから感謝してください」
「まあ、可愛いのは否定しないが」
「え、……あの。……その」
「自分で言って恥ずかしいなら言うなよ……」
どうやら今夜の任務はまだ終わりそうにない……。
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