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薬でふらつく俺を支えながら高橋は器用に歩く。
ドアもとれかけた無人の廃ビルの地下…?
細い通路を通って広いフロアに出た。
「…っ!」
誰かが怒鳴ってる。
近付くと田崎を囲う様にいた数人が一斉に振り返る。
あ…
田崎…
あちこち腫れて額は切れたのか血が滲んでる。
それでも俺を真っ直ぐに捉える。
目は死んでない。
「高橋、お友達起きたのか?」
「お―、この通り。」
高橋の後ろにいた俺を前に押し出された。
「んじゃ成宮くんだっけ?コイツ押さえとくから今までの恨み分殴り?」
軽い口調で煙草を燻らせた男が言う。
「あ…。」
殴りたい…
そう何度も願った。
けど、こんな一方的な状況…良いんだろか?
躊躇う俺に気付いた高橋が口を開く
「その前にちゃんとそいつに誓わせれたのか?」
誓い?
押さえつけられた田崎を殴る葛藤が先送りにされ
安堵しつつ疑問に思う。
「あ―、コイツ首を縦にふんねぇでやんの。」
壁にギュッと煙草を押しつけた男がそれを田崎の顔に投げつけながら答える。
「そこの成宮くんにもうこの先絡まないって。誓えば解放されんだよ?」
めいっぱい田崎の髪を引き抜く勢いで掴んで問う。
痛みで田崎の顔が歪む。
圧倒的な暴力で俺をねじ伏せて来た田崎が今、暴力で押さえつけられている。
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