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「そんなに早よう王都に行きたいのじゃったら歩いて行けば良いのう」
唐突にジジィがとんでもない事を言い出した。
この駅から先、ずっと荒野しか見えてないというのに歩けと!?
俺の持ち物って言ったら、財布とか王都の中の地図とかギルドの許可証とかが入った肩からかけるカバンだけ…おおよそ旅するための持ち物は持っていない…。
「歩いてって言ってもよ~…王都を囲む森林すら見えないのに、こっから歩いたらどんくらい時間かかんだよ…」
俺は、生まれたては黒々と光っていただろう、今や鈍く錆れてしまった線路を目で辿っていく。
「そうじゃなぁ…わしが以前、歩いて王都に向かった時は…三十分くらいかかったかのぉ」
顎のラインを右手の親指と人差し指を挟みながら、昔の体験を思い出すジジィ。
三十分…このまま二時間待たされるよかマシか…
「…んじゃ、歩いて行く事にするわ。じゃあな、ジィさん」
…それから、俺は一時間程…日が照るこの荒野を歩き続けている。
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