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「ハア、ハァ…すいません」
ハンクスの元に駆け寄ってきた青年は息をきらしながら謝罪する。
そんな青年をよそに黒い少年は不機嫌丸出しの声でハンクスに言った。
「それで、今度は何のようだ?くだらない事で呼ぶなとは伝えておいたはずだが?」
問われたハンクスは背後で暴れているクラーケンを親指でクイッと指差す。
「ほう、なかなか見事な暴れっぷりだな」
次々と船を壊しながら魚を奪っていく巨大イカを見て、関心したように呟く少年にハンクスが怒鳴る。
「オイオイ、冗談じゃねぇぞ!?
こちとら商売上がったりだ!早くなんとかしてくれよユーリ!!」
ユーリと呼ばれた黒い少年はヤレヤレと呆れた顔をする。
「落ち着け。まず礼儀がなっていない。
人に者を頼む時はそれなりの態度と礼金が必要だと前に言っただろう?」
「ふざけんな!この切迫した状況でそんな事話してる場合か!?」
ふむ、とユーリは頷くと暴れるクラーケンを指差した。
「まあ私はどうでもいいんだがね…このままではお前の船、今度は再起不能だぞ?」
ハッとして後ろを振り向くハンクス。
彼の船は既に相談室が破壊され、クラーケンの触手は今や船全体を押し潰さん限りの力で絡みつき、船はギシギシと悲鳴をあげていた。
「Nhooooo!わかった!わかりました!
礼金は2000ミルドでいいか!?」
「わざわざ出向いてきたのだ、3000だな」
「く、足元見やがってクソガキがぁ!!」
ユーリに怒鳴り散らすハンクスを横にいる青年がなだめる。
「まぁまぁ…わかったよ。残りの1000ミルドは僕が出すよ。だから頼むユーリ、アイツをどうにかしてくれ!」
そう言って頭を下げる青年を一別してユーリは頷く。
「わかった。何とかしよう」
そう短く答えるとユーリは細い指を宙に向かって高速で動かし始めた。
すると指が辿った軌跡が淡く輝き、みるみるうちに稲妻によって縁取られた魔法陣が形を成す。
「迅雷剣(サンダーブレイド」
そしてユーリが指を鳴らした瞬間、辺りに雷が落ちたような轟音が鳴り響き、魔法陣から雷を宿した刃が凄まじい速度で射出された。
刃はそのまま鋭い軌跡を描き、瞬く間にクラーケンの巨体を貫いく。
『キイィィ!』
という悲鳴をあげ、クラーケンは紫色の体液を撒き散らしながらのた打ちまわり、やがてピクリとも動かなくなった。
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