Prolog:闇のメイガス

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「完了だ。礼金を貰おうか」 ハンクスに向かって手を突き出すと、彼は渋々といった様子で財布の中から1000ミルド札を3枚引き抜きユーリに手渡した。 「ハンクスさん、1000ミルドは僕が出すって言ったじゃないですか!?」 「ウルサい、若いモンに助けて貰っちゃ立場がねぇんだよ!いいからここは俺に払わせろ」 「でも……」 金の事で口論し始める2人。そんな2人を見てユーリはフッと苦笑し、2000ミルドをハンクスに突き返した。 「あぁ…?」 呆けるハンクスにユーリは淡々と告げる。 「その青年の態度に免じて特別にまけておいてやろう。それにクラーケンの遺体を残してしまったからな。依頼は半分失敗のようなものだ。今回は出張費だけ頂く事にしよう。」 そう言って呆けるハンクスの手に2枚の札を握らせるとユーリはクルリと背を向けて歩きだす。 「ではな。くれぐれも言うがくだらない事で呼ばないでくれよ?」 こちらを振り返らずに去って行くユーリを見ながら青年がハンクスに話しかける。 「なんか…初めて見た時は驚きましたけど、呪文詠唱もしないでいきなり魔術なんて…噂通り凄いんですね…」 「あぁ、なんせアイツは伝説の《闇使い》だからな」 すっかり遠くなった黒い影を見ながらハンクスは苦笑する。 「ったく…こっちは大人なんだから3000ミルドくらいとられたっていたくねぇってのに。 いや、見た目に反してアイツのが大人なんだっけな…」  ハンクスはユーリの背中が見えなくなるまで見送ると、脇にいた青年の肩を叩いた。  「さ、あのイカ片して船の修理でもするか!」 「あ、はい!」  そして二人は自分達の船に向かって歩きだした。  寄り添う漁師達の後ろでは、平穏を取り戻した海が静かなさざ波を立てていた…
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