89人が本棚に入れています
本棚に追加
「全く、とんだ変わり者いたものだな」
自分の事を棚にあげ、ブツクサ言いながらもユーリは此処までってきた少女に若干の興味を抱いた。
なんせ単身でこの森に乗り込んできた女だ。
きっと可愛らしいのは声だけで、さぞやゴツい外見をしているに違いない。
「どれ、面でも拝んでやるとするか」
クックと笑いながら近場にある窓から外を覗き、玄関にいる来訪者の姿を見やる。
「…なんだか想像と違うな…」
思わず本音が出てしまった。
だがそれも仕方あるまい。なんせ、玄関口にいたのは熊のような怪物女ではなく、1人の華奢な少女だったのだ。
向こう側を見ているため顔はよくわからないが、肩まで伸びた金髪や、服の裾から覗くすらりと延びた白い手足はなかなかに見事なものだった。
じっとしているのが苦手なのか、さっきからせわしなく動いている。
「…まぁ、顔がいいと決まった訳ではないし、さぞかしブスなのだろう」
あくまでも他人を簡単に認めないのが、ユーリという人物である。
「ま、暗くなる前には帰るだろう」
フンと小さく鼻を鳴らしてからユーリは来た廊下を引き返す。
そのまま居間に立ち寄ると暖炉の火を消し、コーヒーサーバーとカップを持って家の奥にある書斎へと向かう。
「やれやれ、小娘のせいで10分も無駄にした…」
理不尽にぼやきながら書斎の扉を開けると、部屋を埋め尽くさんばかりの本の山と、皮の匂いがユーリを出迎える。
その光景になんとも言えない安らぎを感じながら、ユーリは真ん中に置いてある大机にコーヒーサーバーとカップを置く。
「さて、昨日の続きでも読むとするか」
そう言うと彼は一際高く積み上げてあった本の山の中から一冊の本を引っ張り出した。
最初のコメントを投稿しよう!