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「長い年月のせいで私は…あなたの顔すら、忘れてしまいました。想いは今でもこんなにも、ハッキリと残っているというのに…」
「だから私は、あなたに逢いに行きます。あなたが眠る、あの場所へと…」
朽ちかけうまく動かない体を、引きずるように歩いた。
何度転んでも、ただ、前へ進んだ。
彼の眠る場所。
彼が好きだった色の花を添え、私はただ、願った。
彼とともに、眠らせてほしいと。
『…願いを叶えよう…。君は充分、一人で生きた』
「あ、ああ…」
聞こえた。
彼の声が、聞こえた…!
夢の中でしか聞くことのできなかった声が。
ずっと聞きたかった声が、やっと…。
やっと…。
「やっと…逢えましたね…」
暖かい光。
私の、唯一の希望。
それが今、私の傍にいる。
私を抱きしめ、笑っている…。
「ずっと…私の傍にいてください…」
後にはもう、何も望まない。
だから…。
「もう離れないように、抱き締めていてください…」
私は、うまく笑えたでしょうか…?
『そしてそっと、愛しい人の名を呼ぶ』
(長い夢から覚め、手に入れたのは幸福な時間。この幸せが永久に続くよう、ただ祈り続ける…)
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