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「はぁ…はぁ…うっ、ゲホッ!ゴホッ!!」
地面に崩れ落ちる二つの音
「お……み、さん」
腫れ上がった狼さんの冷たい頬を撫でる。もう原型すら留めていない顔。
だけど…大好きな狼さんには変わりなくて。
猟銃を撃つ私に、皆は口々に狂った、止めろ、気が触れたと叫んだ。
(狂っているのは…あなた達なのに)
最後の一人を撃ったと同時に、私のお腹に生暖かい感触が広がった。
だけど…倒れる訳にはいかなかった。
「お…かみさん、見えま、すか?」
一面に広がる宝石のような花畑。蝶々が歓迎するように私たちの周りを舞ってくれているみたい。
「来よ…ね……や、く、そく」
またゴボリと口から血が流れ出る。痛くて、辛くて、苦しくて。今すぐにでも…楽になりたい。
だけど
「ま、た……あえ…ま、すか?」
返事が無いのは分かってる。
ただ静かに風が吹き、木の揺れる音、小鳥の囀りが響き渡る。
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