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「あ……あ…あ……っ!?」とまだ動揺している声の主は『桜乃 雪』。僕とは中学以来の友達だ。
桜乃は恥ずかしがり屋で内気な性格の為異性の友人は少ない。だが話してみるととても優しく面白い娘だ。
そんな彼女は口に手を当てて見ている。
「さ、桜乃っ!?……こ、これは…ち、違っ!!…」
慌てて胸から手を離すと栞さんはむぅと頬を膨らましている。
「……何が違うの?………春日くん?」
う………何も言い返せねぇ……てか今の桜乃に信じて貰う事は無理だろう。
入学式のあれが無ければな…………
いやいや過去を悔やんでもしょうがない。
「桜乃?……聞いてくれ!」
桜乃は「何かな?」と言うとゆっくりこっちに近づいてくる。
「……こ、これは事故なんだ!!」
バシッ
「っ!?………桜乃?」
近づいて来た桜乃は僕をぶち、顔を俯かした。
「……何が……」
「えっ!?」
「……何が事故ですか!!……春日くんは最低ですっ!!」
顔を上げた桜乃の瞳からは大粒の涙を溢れ出している。そして足早に彼女は落とした荷物を拾わずにどこかへ行ってしまった。追うことも出来ない僕はただその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
窓を通して入ってくるオレンジ色の光はそんな僕を温かく包み込んでくれた気がした。
そんな事を思うと夕陽がいつもより少し明るい気がした。
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