黒猫

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「おはようございます、空様」 「おはよう」 ドアのノックで目が覚めた。 それと一緒に私の部屋に黒いスーツをキッチリ着こなした若い男が入ってきた。 執事の青山だ。 青山は黒縁の眼鏡を中指でクイっと上げると私に頭を下げた。 私は重たい体を大きなダブルベットから無理矢理起こして窓ごしに空を見上げてみる。 「今日のスケジュールを申し上げます。今日は先日旦那様が仰っておられました貿易会社社長、本能児修三様の御子息、本能児晴敏様との婚約発表会です」 今日は晴天。 雲が真っ青な空にゆっくり流れていく。 「ですので午前中は………」 今日もまた機械のように淡々と私のスケジュールを決めていく。 私はまだはっきりしない意識のまま青山の話を聞き流していた。 「……ということですので早速ですが朝食をご用意致させていただきました。ここまで運ばせましょうか?」 「…いらない」 「かしこまりました。ではお着替えの方を…」 「自分でできるからもう下がって」  
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