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総司の優しさが暖かくて、けれど素直に受け入れる事はできない。
「土方さん…は私が嫌いでしょ?」
さっき覚えた名前。
あの人の私を見る鋭い目を思い出したら総司の言葉が嘘にしか聞こえない。
私はそっと触れていた手を総司から少し遠ざけた。
「ふふっ!!そういえば空…さっき土方さんに物凄い事言ってましたねぇ!!」
「だ、だって…!!」
思い出したかのようにケラケラ笑う総司に少し腹がたってぷくっと頬を膨らます。
『ぷしゅー』
「土方さんはあんな言い方しかできない人なんですよ」
私の両頬に溜まった空気がいつの間にか笑いの治まっていた総司の細い綺麗な指によって抜かれて勢いよく外に漏れた。
「その証拠に、あなたを''追いかけるな''とは言われなかった…」
人を心から思う…ってこういうことなのかな…。
そう言って土方さんの事を思い出しながら話す総司をみて思った。
曇りなんてひとつもなくて、ただただ温かくて愛おしそうに遠くを見つめる澄んだ瞳。
こんなに総司に思われている土方さんはやっぱりずるいと思った。
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