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「だから帰りましょ?」
そっと差し出された手を、今度こそしっかり掴んだ。
総司はニッコリ微笑んでまた来た道を引き返した。
―――――――
―――――
―――
「はぁ…」
私は胸の下までしかない湯船になんとか浸かろうと体を沈める。
「湯加減はどうですか?」
突然の声に体がビクッと反応する。
「はい、とても気持ちいいです」
私は声の主が近藤さんの妻女であるつねさんだとわかると肩にはいった力を抜いた。
「それは良かったわ。着替えはこちらに置いときますから、ゆっくり体を温めてくださいな」
そう言うとつねさんは静かに去っていったようだ。
あの後家に帰った私達をつねさんが笑顔で迎えてくれて、総司の勧めもありお風呂をいただくことにした。
近藤さんも私を笑顔で迎えてくれて少しほっとした。
だけどやっぱり土方さんはそこにはいなくて「土方さんはひねくれてますから」と、総司が私を励ましてくれたけれど私はまだモヤモヤした気持ちを隠せずにいた。
「…雨がやんだら出ていこうかな」
私は意を決して風呂場から出た。
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