黒猫

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廊下を歩いていると若いメイド達が私の噂話をしていた。 「えぇ。相手の殿方もとてもハンサムな方なんですって」 「まさに、美男美女ね!!」 全然嬉しくない…。 「おはよう、みんな!!」 だけど私は笑顔でメイド達に挨拶をした。 これもいつものことだから慣れてるの。 「あぁっ、空様!!」 「おはようございますっ!!」 メイドたちは慌てて頭を下げる。 「もぉ!!空様じゃなくて空でいいっていつも言ってるでしょ!!」 少し膨れて見せる。 「で、ですが空様…」 「そ・ら!!」 私はメイドさんの言葉を遮り叱るように言う。 「し、しかしっ…旦那様に怒られてしまいますので…」 メイドたちは皆困ったように下を向き、口を紡ぐ。 また『旦那様』…。 「…~っなぁ~んてね!!言ってみただけ!!今のは冗談だから忘れて?」 そう言って私は少し小走りでその場を離れた。 「空様…」 残されたメイド達がその後ろ姿を痛々しく見送っていたことを私は知らない。  
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