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風呂場を出ると綺麗に畳まれた藍色の着物が棚の上にそっと置かれていた。
前だけちゃんとしめれば大丈夫か…。
私は普段着馴れない着物を手にすると、前だけはだけないように帯びでしっかりしめて、その場を後にした。
みんなどこにいるんだろ?
風呂場を出て適当に辺りを見渡してもさっぱりわからない。
「おいっ!!」
「ひっっっ!!」
突然背後からドスの利いた低い声で名前を呼ばれて変な声を発してしまった。
勢いよく振り返ると、私が今一番会いたくない人…土方さんがいた。
「こんなとこで何こそこそしてやがる」
土方さんはもともと鋭い目をさらに鋭くして私を睨みつける。
そんなに睨んで疲れないのかなっ…?
「みんなのいる部屋がわからなくて…」
心の中でイヤミをいいながら潮らしく答える。
「ハンっ、どうだかな…。だいたいそんなカッコで誰をたらし込む気だ?」
私は明らかに疑いと馬鹿にされたような顔で土方さんにそう言われ、ムカつきながらも自分の姿を確認する。
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