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私はそのまま大広間には向かわず、屋敷の庭に出た。
庭には綺麗に手入れされた芝生が広がっており、真ん中には周りを石で囲まれた大きな池がある。
私は庭にある大きな桜の木の木陰に腰を下ろすと、木の幹に体を預けた。
桜は美しく、そして堂々と咲き誇っていた。
そしてまた空を見上げる。
少し眩しくて目を細めた。
雲は変わらず空を流れる。
4月の暖かい風が私を吹き抜けた。
――生きるって何だろう。
この狭い檻の中でしか自由が無い私は何のために生きてるんだろう。
自分のしたいこともできずにただ生きていることは、本当に生きていると言えるんだろうか。
私はお父様の操り人形なんかじゃない…。
私は自由になりたい。
自由になって、自分の道を歩きたい。
心の底から誰かと笑いあいたい。
そんな…
そんな当たり前な事も…
私は願っちゃ駄目なんですか?
気がつけば、右目から一筋の涙がこぼれ落ちていた。
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