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――チリン、チリン――
「………鈴…?」
私の耳に綺麗な鈴の音が聞こえた。
涙を手で取り除くと私の家の塀の上を我が物顔で歩く黒猫の姿を見つけた。
―チリン―
黒猫の首にはすでに光沢を失ってしまっている小さな金の鈴が揺れていた。
…どうやって登ったのかな?
私の家の塀は5メートルほどの高さがある。
いくら猫のジャンプ力があってしてもそう簡単に登れるはずはない。
『にゃあ~』
その黒猫は私を1度振り返り、1鳴きしてから私にお尻を見せてスタスタ塀を歩いていく。
―チリン―
再び鈴が揺れる。
「不思議な猫…」
その温かい音も猫の声もまるで私を誘ってるみたい…。
私は好奇心からか黒猫の後を追ってみる。
「あっ…」
少し行った所で黒猫は塀の外に飛び下りてしまった。
私の小さな冒険は一瞬のうちに幕を閉じたのだった。
もうちょっとわくわくさせてくれてもいいのに…。
私はがっくり肩を落とした。
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