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美斗、と言われた子は少し低めの背丈で、栗色の長いふわふわ巻かれた髪を揺らし、真っ白なワンピース姿でこちらにやってきた。
隣にいる刹那を盗み見ると案の定見とれていた。
「誕生日おめでとう、樹」
「おう。来るの遅かったな」
「あはは、さっき起きたんだ」
私なんか起きたばっかりは寝癖だらけだし、目もはれぼったくて準備に時間がかかるのに、あの子はなんでそんなに完璧なのだろう?
「あ、紹介するね。俺の家の隣に住んでいる水川 美斗。美容系の専門に行ってるんだ」
「初めまして、美斗です」
「徳永 いずみです」
「吉村 刹那です。刹那って呼んでください」
ちゃっかりしてるよ、馬鹿刹那。
しばらく6人で話していたが、季結が眠いと駄々をこねたので陸が連れて帰った。
季結が帰ると美斗はしきりに樹に話しかけていた。………私にはそう見えた。きっと樹が好きなのだろう。
馬鹿だな、私も。
嫉妬なんて………。
本当は気づいていたのにずっと気づかないふりをしていた。
だって季結が好きだったからそんな風には思いたくなかったから。
でももうふりなんてできそうにもない。
季結なら我慢できたけれど、美斗を見てると胸が痛くて、息苦しく感じる。
「ごめん、刹那。私、先帰るね。また明日!」
「え?送るよ?」
「ううん、いい。まだ明るいし、1人で帰りたい気分なの」
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