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一歩、一歩、足を進める度にひとつ、ひとつ、心に積もっていった。
一目惚れだったのかな。
気がついたら目で追うようになって。
きっと妹のように思っているに違いない。よく可愛いって言ってくれて。お世辞だってわかっていたけれど、それでもやっぱり嬉しい。
授業が難しく、ついていくのがやっとで落ち込んでいたときも心配してくれて、季結と一緒に勉強を見てくれたこともあった。
綺麗な夕日の写真が撮れたとき、現像した写真を見せたら誉めてくれたこともあった。あの大きな手で頭を撫でてくれた。
あの時も真っ赤になった顔が恥ずかしくて俯いてたら笑われたなぁ。
思い出したら短い間にこんなにも好きになる要素があったのか、と驚いた反面、美斗に見せつけられたような気分になって苦しくもなった。私の知らない樹がそこにいて、でも美斗はそれを知っていて。
悔しい。
でも
悲しい。
『恋は甘酸っぱい』
って誰かが言ってたの今ならわかる。
昼間はあんなにも暑かったのに、日が落ちた静かな夜道はひんやりとしていて、1人歩く私の肌をそっと撫でた。
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