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事務室から花をとって戻ってくると、央悸は同じクラスの女子にまとわりつかれてどこかへ行ってしまった。
私は一人椅子を運びながらぼ-っと考える。
央悸が寂しげな表情をした気持ちはすごくよくわかる。
私だって、記憶のなかの央悸が大きく変わっちゃってたらきっと落ち込んだ。
記憶のなかの央悸はいわば理想の男性像だったから。
私が悔しいのは、央悸に会うことを信じて少しでもかわいくしようと努力しなかったこと。
もともとがかわいくない、とかそういう問題じゃない。
もとがいいか悪いかはおいといて、かわいくなろうと努力しなかった。
幼稚園の頃の私は努力する大切さがちゃんとわかってたんだな。
だから毎日せっせと三つ編みしてウェーブつくって―――
別に今までの生き方が悪かったとは思わない。
これはこれで「私」だったから。
でも。
ふ、と窓にうつった自分の姿をみる。
央悸をがっかりさせたことはやっぱり悔しくて、悲しいんだ。
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