ある夏の一日

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夏の暑いお昼時。 用事が入った私は,図書館がある丘の上からA子と下って来る途中だった。 「今1時8分。」 「まだそんな時間かぁ。」 「約束は何時なん?」 「30分~」 「まだまだやん!!」 車もなければ人通りもない道で自転車をスルスルとこいで行く。二列走行でも全然平気な田舎道だ。 話をしながら, 相手との距離を保ちながら走るのは,夏の嫌な暑さを感じさせなくて良い。 一人ぼっちで自転車をこぐとなると,なぜだかどうしても早め早めに急いでしまう質なので,交通ルールは破っても,こっちのほうがずっと心地よく感じられた。 「時間余ったから近くのスーパーで涼むわ。」 私は涼みついでにお昼を買って用件の場所に直行することに決めていたのだ。 「…やったら私も。」 「あれ。着いて来てくれるん?」 A子の家はもう目と鼻の先にある。 私の家と違って彼女の家ならこんなスーパーで菓子パンなど買わずとも、美味しいお昼ご飯が待ってるだろうし、A子の性格上、私に対してならまず真っ先に家に帰るはずだ。 薄情にも。 でも今回は違うらしい。
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