ある夏の一日

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片手に持っていたミルクティーを返して,私もA子につられてコーラを手にとった。 私がA子のもとに戻ると,彼女の手にはすでに白いビニール袋があった。先に会計を済ませてきたらしい。 「少しくらい待ってくれてもええのに。」 少し悲しい声で呟いても,私の文句なんてA子にはきっと聞こえていない。 聞こえていたとしても,彼女はただ,その言葉を受け取るだけだ。 店から出ると,今度は熱帯にでも放り出されたかのような気分になる。そしてすっかり熱にやられているサドルにまたがる。 サンダルのサキッぽで地面を蹴って,ゆっくりゆっくり漕ぎ出して。 私達はまた,明日も図書館に行く約束をする。 明日になっても,日常が動いて行くだけ。 たった2人の,でも掛け替えのない最後の夏休みが,ゆっくりと動いていくだけなのだ。 end
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