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一年くらい前から家のリビングに立っている大きなヤシの木。
父がずっと欲しいと言っていて,ある日突然家にやって来た。
2m30cmはゆうにあるだろうその木は存在感抜群で,今ではすっかり家の一部になっていた。
なのに,今日の夜。
父があんなに大切にしていたヤシの木の葉を、父自身が大きなハサミでザクザクと切り出した。てっぺんにふさふさと生えていた大きな葉。
切り落とされた葉が、リビングの床にどんどん広がる。
私も兄も弟も,突然の父の行動に驚いて,そして父を止めた。
あんなに生い茂っていた木の葉が,見れば可哀相なくらいに薄っぺらくなっていた。
葉を切ったのにはもちろん理由があって,どうやらこのヤシの木は病気らしいという事だった。
よく見ると,葉には細かい黄色の点々がついていて,専門的にはよくわからないけど,これが,その病気の原因という奴らしい。
父は本当に残念そうに,その大きな木を担いでベランダに出た。弟がすぐさまベランダの電気をつける。
私と兄は父と木を追ってベランダに出た。
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