第1話/孤児、人生の転機

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「見つけたぞ」  男の声がした。  青年は立ち止まり、声の方向を目で追う。  ふと、廃屋同然である家屋の屋根の上に、逆光を背にした銀色があった。  男の銀髪が、天から降り注ぐ陽光を受けて輝いている。  漆黒の外套が体格こそ隠しているものの、切れ長の聡明なる双眸、漂う気品、風体からして、このエリアに存在するには不釣り合い窮まりない。 「アラン様!」  先程の女が声を上げたことで確信する。  この男は敵である、と。  理解するが早いか、青年は新手の出現を無視し、その場からの逃走を再開しようと試みる。 「あっ!」  青年が立ち止まったのをいいことに、気を抜いていた少女が素っ頓狂な声を上げる。 「……、私がいこう」  天から降ってきた声がラーラの耳に届くか届かないかの間に、塞がっていた光の遮りは消えていた。  青年は全速力で逃げ出したつもりだった。  突然、2、3m先に砂埃が舞い上がった。 「うわっ」  奪われる視界に目を覆い隠しながら走り去ろうとした青年はふと、なにかに足を引っ掛けて転倒した。 「……っつ…」  仰向けになった青年の視界が徐々に明瞭になっていく。  と同時に、『何が』自分に起きたかを理解する。  今の今まで廃屋の屋根にいたはずの銀髪黒マントが、目の前で訝しげに自分を見下ろしていた。
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