■今は昔。

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  今は昔、【楽園】と呼ばれていた世界が在った。   極彩色の花は咲き乱れ、 鳥達は愛を歌い、 蒼天は太陽の光を讃え、 広大な緑の大地を照らしていた。   “神”はそんな美しい世界に、自分に似せた二人の肉人形を作り出した。   アダムとエヴァ。   アダムは太陽の炎のような美しい赤髪に、空色の瞳を持った【男】。 エヴァは月の灯りのような妖しい金髪に、海色の瞳を持った【女】。   二人はいつも寄り添い歩き、世界に在る全ての平和と愛の象徴となった。     ―だが、そんな平穏な日々は長くは続かなかった。   神を脅かし自らが神に成りかわらんと目論み堕天した者、“サタン”が、蛇へと姿を変え、神の似姿達にこう囁きかけたのだ。   『美味しい赤い木の実が有るよ』   蛇が差し出した赤い実は、神が口にする事を堅く禁じた禁断の果実。   『神(ヤツ)は君達を騙している。 この“世にも美味しい果実”を、神は独り占めしてしまおうっていう魂胆なんだよ。   このまま神(ヤツ)の言いなりに生きていていいのかね? この世界にはまだ沢山の未知が溢れているというのに、縛られ、拘束され…   君達は勿体無い事に、本当の自由というヤツをまだ知らないのだよ!!』     私なら君達に本当の自由を君達に与えてやれる、さぁ、先ずはこの甘い木の実をお近づきの記しに君達にやろう。   さぁ、こっちへおいで。   一口かじるだけで、君達は今日から“こちら”の仲間入りだ。   さぁ…こっちへ…         ―そして好奇心旺盛な二人は、赤い木の実をその穢れ無き口へ。
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