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今は昔、【楽園】と呼ばれていた世界が在った。
極彩色の花は咲き乱れ、
鳥達は愛を歌い、
蒼天は太陽の光を讃え、
広大な緑の大地を照らしていた。
“神”はそんな美しい世界に、自分に似せた二人の肉人形を作り出した。
アダムとエヴァ。
アダムは太陽の炎のような美しい赤髪に、空色の瞳を持った【男】。
エヴァは月の灯りのような妖しい金髪に、海色の瞳を持った【女】。
二人はいつも寄り添い歩き、世界に在る全ての平和と愛の象徴となった。
―だが、そんな平穏な日々は長くは続かなかった。
神を脅かし自らが神に成りかわらんと目論み堕天した者、“サタン”が、蛇へと姿を変え、神の似姿達にこう囁きかけたのだ。
『美味しい赤い木の実が有るよ』
蛇が差し出した赤い実は、神が口にする事を堅く禁じた禁断の果実。
『神(ヤツ)は君達を騙している。
この“世にも美味しい果実”を、神は独り占めしてしまおうっていう魂胆なんだよ。
このまま神(ヤツ)の言いなりに生きていていいのかね?
この世界にはまだ沢山の未知が溢れているというのに、縛られ、拘束され…
君達は勿体無い事に、本当の自由というヤツをまだ知らないのだよ!!』
私なら君達に本当の自由を君達に与えてやれる、さぁ、先ずはこの甘い木の実をお近づきの記しに君達にやろう。
さぁ、こっちへおいで。
一口かじるだけで、君達は今日から“こちら”の仲間入りだ。
さぁ…こっちへ…
―そして好奇心旺盛な二人は、赤い木の実をその穢れ無き口へ。
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