■死ねよ。

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  【フィーム修道院】。 200人程度が生活出来る宿舎が完備された、大きな孤児院である。   ステンドグラスや聖描画などの派手な装飾品は無いが、黄土を彫って作られた天使像達が院の至る所で無垢な微笑みを称えている。 その天使像一体一体、この孤児院の創設者“マリア・ルベル”が、“天使のように、子供達には純粋に育って欲しい”という願いを込めて彫られた。   そんな愛に満ち溢れた修道院の一室。   創設者の願いを全く真っ向から否定するかのように、パンツ一丁でベッドに横たわる少女が一人。 銀色の髪と長い睫。 白い肌に桃色に色付いた頬。 薄紅色の唇からは激しい壮烈な歯軋りを奏でていた。   白薔薇のようなその美しさが、ブチ壊しである。   少女の周りを円陣を組むように、漫画、菓子の空き袋、食べかけのパン、漫画、脱ぎ捨てられた修道着、漫画、漫画、脱ぎ捨てられたパンツ、漫画が散らかる。   それらの物が折り重なり、せめぎ合い…そるはまるで一度入ったら抜け出せない、木々が入り組んだ樹海のような部屋。   だが少女は大口を開け、時折激しい凄絶な歯軋りをしながら、安らか過ぎる程に眠っていた。   “―…ルカ…ルカよ…”   自分の名を呼ぶ誰かの声。 一瞬瞼を痙攣させたが、彼女は白目を剥いたまま、「巨乳になりてぇ…」と呟くと、また深い眠りについた。   “…ルカよ…目覚めよ、ルカ…”   もう一度自分の名を呼ぶ声。 だが彼女は今度は反応する事無く、夢の中で巨乳になっている自分にこれでもかという程テンションが上がっていた。   「やっべぇ、うほっ!!夢のGカップだよマジやっべえ!!」   呼び声は焦った。 やべぇのはお前の頭ん中だと思った。 このままだと何か話が駄目な方向に行く、駄目だ早くどうにかしないと。   “ちょ、ルカ!!…ルカって!!目覚めよ!!取り敢えず目覚める所から始めよ!!”   「…うっせぇ…死ねよ…」   “…”   呼び声は泣けてきた。
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