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「あれはその、いや……」
「いいの。優美は挨拶代わりにキスする癖があるもんね。分かってる」
やっぱり、見られてたんだ。
「分かってるけど…何だか、さ」
和泉が寂しそうに笑う。
確かにあのキスに深い意味なんてなくて、初めてでもない。
外国で育った優美にとっては本当挨拶みたいなものらしく、僕も和泉も他のクラスメイトだってもう慣れた筈、だったのに。
「なんか、ごめん」
我ながら情けない。
必死に考えて考えて、絞り出した言葉はそれだけだった。
「佐倉は悪くない」
沈黙。
「…………」
沈黙。
「…………」
……沈黙。
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