「ちくわ、いかがでしょうか?」

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会社帰り。 どうしてもちくわが食べたくなった僕は、吉田ストアに行くことにした。 最近来てなかったけれど、練り物売場の位置は覚えているさ。 「新発売のちくわ、お一ついかがですか?」 お、今日は試食販売なんてしてるみたいだ。 新発売か…一つ貰ってみようかな。 「新発売のちくわ、お一つ……」 こっちを見た店員さんは、一口サイズのちくわが乗った小皿を持ったまま止まってしまった。 その様子を見て、僕も止まった。 「久しぶり」 「…………」 動かない店員さん。 あの日と同じ、長めの沈黙。 「あー……これも、運命って奴なのかな?」 僕がふざけてそう言うと、店員さんの固まっていた表情が少しだけ崩れた。 「色々挫折しちゃって、結構傷ついてるんだけど」 ムスッとした顔。 数年前に突然遠くへ行ってしまった、懐かしい顔。 「ごめんごめん」 「謝るくらいならちくわ買ってよね、ちーくーわー」 僕は練り物が好きだ。 特にちくわが好きだ。 でも今日は、練り物よりもちくわよりも…ちくわが好きな僕を大好きになった。
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