桜散る中

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 これほど執拗に、誰かと互いの唇を貪り合う事は、僕の生涯、もう二度とはないだろう。  そんな予感がした。  桜の花弁が、季節外れの雪の様に降り頻(しき)る中、僕達は粘膜を押し付け合い、体液を交換する、その卑しく、醜い営みを、街灯の照らす夜の桜並木に隠した。
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