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その事実は、僕達の行為に背徳の刺戟を加えた。
彼女が、愈々(いよいよ)溜らないという風に、僕にしがみついてきたので、僕は彼女の果てる、そのほんの直前を見計らって引き抜いた。
絶頂への期待を裏切られ、だらしなくへたり込みながら懇願する彼女は、野性を剥き出して快楽を貪る一個の獣だ。
「桜は嫌いよ」と、いつか彼女は云った。地面に落ちた花弁が汚らしくて、咲き誇る姿が偽りの様だと。
僕はその言葉を思い出すと、酷く滑稽な気分になった。
彼女こそ、桜の花弁そのものだ。
地べたに堕ち、泥にまみれ、或いは茶色く酸化した、薄汚い、花の屍だ。
しかしそれは、彼女が醜いという意味ではない。
事実、目の前の彼女は、確固たる美しさで、僕の醜い陰茎を、執拗(しゅうね)く口に含んでいる。
思えば、僕が彼女と出会った時、既にあの家は狂っていた。
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