永遠の咎人・ジョーカー

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「あなたの名前が知りたいわ」 名前を聞いたのは、ただの気まぐれ。 その人は困ったような顔をして、あたしに微笑んだ。 「私の名前は封印されています。代わりにジョーカーとお呼び下さい」 「なぜ封印されているの?」 聞いてはいけない気がしたけれど、禁忌を犯す背徳感に逆らえない。 「私の犯した罪を、永遠に贖うために」 罪と罰。 永遠に続く贖罪。 それほどの罪ってなんだろう? 「なにをしたの?」 秘密を知りたい。 甘美な誘惑。 「神を殺したのです」 神殺しのジョーカー。 告白の重さに、あたしはおののいた。 「なぜ殺したの?」 そんな大罪を犯す理由とはなに? ジョーカーは、綺麗な蒼と碧の混じったような眼で遠くを見つめる。 それはきらきらしていて、手に入らない蝶の羽に似ていた。 「ずいぶん前の事ですから、もう忘れてしまいました」 ジョーカーは曖昧な笑みを浮かべるだけで、理由を教えてはくれなかった。 「じゃあ、あなたの贖罪とはなあに?」 「新たな神となり、永遠にヒトの願いを叶える事です」 ジョーカーが見上げた夕方のピンク色の空に、ふわりと天使が舞い上がる。 願いの数だけ生まれる天使。 「ヒトに隷属し、ただ願いを叶え続ける。それが私の罰」 神の孤独。 ジョーカーのしあわせを願うのも、罪なのだろうか? あたしはカナシミを押し殺し、天使が飛んでいった空を見上げていた。
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