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誰もいない夕映えの眩しい教室で、あたしはその鍵を拾った。
夕日をうけてきらきら輝く金色の鍵。
拾いあげて見つめると、背後から綺麗な指が延びる。
「ああ、ここにあったのですね」
振り返ると、黒い服の男の人が立っていた。
「それは何の鍵なの?」
「永遠天使生産工場の」
男の人はそう言って、何もない空間に鍵をさす。
カチリ。
顕れた白い扉が静かに開いた。
「ご覧になりますか」
「ええ」
あたしは男の人に連れられて、扉の向こうに入っていく。
「ここでは、願いの数だけ天使が創られるのです」
男の人の指さす先で、自動人形が休みなく、ベルトコンベアのパーツを組み立ている。
創っているのは天使。
「降り積もる願いは、途切れる事を知りません」
昼も夜もなく働く自動人形たち。
「あなたには特別に《天使の原型》をお見せしましょう」
開かれた金色の扉の向こうに、虹色に輝くステンドグラスと白い巨大な十字架が見える。
「あれが《天使の原型》ですよ」
男の人が指さした、十字架に磔けにされた少女。
胸に深々と刺した、二本の大きな剣は背中を突き抜けて、まるで銀色の翼のよう。
「あれは《永遠少女アリス》です。すべての願いの犠牲になる事で、永遠を手に入れた少女」
願いの代償は、あまりに綺麗で残酷だ。
あたしの頬を涙がつたう。
「願う事をやめれば、彼女は解放されるのです。だけどヒトは願う事をやめられない」
《永遠少女アリス》は儚く、すべての願いを受け止める。
やがて訪れる世界の終末まで。
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