親友

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誕生日だけじゃない。 クリスマスに初詣。その上、二人の付き合い始めて何ヶ月記念にまで付き合わされた。 確かに、翼は言い出したら聞かないけど……彼氏である颯太がどうにかするべきだと思う。 なんで、“付き合う二人の記念日に、男である俺を参加させるのか”と。 「言っとくが、オレや翼はお前が邪魔だなんて思ってねえぞ? むしろ嬉しいんだ。それにな? お前が迷惑なら言ってくれ」 迷惑だなんて言えるわけない。 真剣な表情の颯太に、心の中で小さくそうつぶやいた。 迷惑なわけがない。 二人は俺の大事な親友だ。 確かに見るのがツラいときもあるが、それ以上に嬉しくなるものなのだ。 だから── 「迷惑なわけねーだろ」 ケガした頬のせいでひきつっていたけど、静かに笑みを浮かべた。 「あー、お取り込み中悪いんだがー……」 突然聞こえてきた声。 もしかしなくとも、この声はこの部屋の主である香月のもの。 そちらへ視線を向ければ、右手でボサボサの髪をかく香月が映る。 「ここは怪我を治療する保健室であって、心温まる青春友情ストーリーを紡ぎ出すところじゃねーぞー」 やる気のない声に、気を落とされる言葉。 恥ずかしいとまではならなくとも、香月に呆れてものも言えなくなる。 颯太は単純だからか、香月の言葉に顔を赤くしていた。大方、今までの会話を聞かれていたため、恥ずかしくなったのだろう。 「タイミング悪いな……」 「悪いもクソもあるかよ。ここはオレの城。マイ・ベスト・プレイスなわけ。いつまで占領してる気だ」 ケガして眠っていた生徒になんという言い草だ。 思うだけで口には出さず、ただ軽く睨むだけ。 颯太にいたってはいまだに顔が真っ赤だし。 「それに……コイツを待たせ続けっと学校中から恨まれんぞー」 その言葉にはっとなる。 見れば、保健室入り口のドアより気まずそうにこちらを覗く翼の姿があった。  
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