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「翼……?」
「やー、お二人さん。どーもー」
どこかよそよそしい態度の翼に眉が眉間に寄せた。
どうやら颯太も同じようで、不思議そうに首を傾げている。
「わたしはお邪魔かな、ってね? 時間かかるならいいよ。香月先生とお話してるからさ」
翼は、俺や颯太の言いたいことが分かったようで、にっこりと笑いながら答える。
確かに翼に聞かれない方がいいかな、とも思うが、別に邪魔というわけではない。
それ以前に、だ。
もう香月に話しかけられた時点で会話は終わっている。
「邪魔じゃねーよ。……帰るぞ、颯太」
まだ呆然としている颯太の肩をそれなりに力を込めて叩き、我に戻してやってから俺もベッドから立ち上がる。
なるべく勢いは殺していたものの、やはり微妙な振動やかかる体重に、右足へと電気みたいな痛みが走る。
あー、くそ。
走れねえじゃんか。
小さくもれるため息を隠そうともせず、颯太に持ってきてもらったリュックを背負い、翼のもとへと歩き始める。
やはり右足に体重をかけることはできず、引きずるような感じになっていた。
「病院……は大丈夫だな。打撲だからまあ無理しなきゃ問題ねーだろ」
肩にポンっと手を置かれ、見下ろされるように言う香月にうなづく。
病院は嫌いだし、行きたくないし、行けない。
そんな俺らへと近づく翼。
そちらへと視線を向けたときには、翼の顔が真正面にあった。
「奏! またケンカしたのね!?」
きっと睨むように言われれば、いきなりのことに怯んで後ろへと後ずさる。
が、後ろにはすでに颯太がいて、大した距離を取ることもできない。
「もー。あれだけ言ったのに! ケガばっかしないでってば! 心臓に悪いの!」
「いや……翼は颯太のことだけを心配してやればいいだろ……?」
「いや、それに関してはオレも翼に同感だな」
はっきりと告げられた言葉に、俺は返す言葉が見つからなかった。
これは俺の態度や髪とかのせいであって、仕方のないことなのだ。
だから二人に心配してもらうようなことじゃないのに。
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