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ワンコールも鳴り終わらないうちに、勢いのある声が聞こえてきた。
『奏ッ! 奏か!? 土曜空いてるのか!?』
「声、でけーな。なんだよ? 翼の誕生日は日曜だろ?」
何をそんなに焦っているのか。
というよりも明後日の話に、なぜ今からそんなに慌ててるのかも分からない。
寝ころんでいたのを起き上がり、壁に寄りかかりながら、胡座をかいた。
『楓花が! オレはセンスないって言いやがったんだよ!』
「はあ? それがどうしたら焦る理由になるんだよ?」
楓花とは颯太の妹で、二つしたの中三。
颯太に似て運動神経もよく、成績は颯太に似ずそれなりに取れている。
でもって背も高い。
まだ俺の方が大きいものの、確か今は168センチとかなり危険域にまで達している。
で。
楓花にセンスがないと言われたから何だと言うのだ。
『だから! 楓花がオレの選んだヤツじゃ翼は喜ばないって!』
「あーなるほど……」
要は翼の誕生日プレゼントを一緒に選んでほしいというわけか。
しかも楓花に“センスのない”ものは翼にゃダメだと言われて。
『あ、おい、コラッ!』
「あ? おい、どうした?」
『もしもーし? 奏ちゃん?』
颯太の怒る声が聞こえたかと思えば、いきなり電話の向こうの声が変わる。
高く可愛らしい女の声。
もしかしなくても──
「おいおい……俺は颯太の友だちであって年上なんだぞ? ちゃん付けで呼ぶなよ、楓花」
『へへ、ごめんなさーい』
後ろから颯太の声が聞こえる辺り、無理やり楓花が電話を奪ったのだろう。
ずるずると壁を滑り、ボスン、とまたベッドへと寝転がる。
『奏ちゃんは今日バイト?』
「今日はねーよ。だからもう寝るつもり」
名前の件は、俺が中一のころからのせいで半分は諦めている。
電話の向こうではなにやら楓花と颯太が話している様子。
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