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──春。
桜は咲き乱れ、そよ風に花びらが舞散る中、俺は“ここ”へと足を運んだ。
風に揺られる木々の合間から漏れる日は暖かく、どこか安らぎを与えてくれる。
ふと……視界に入った一枚の花びら。
掴もうと右手を伸ばし、何度か空を掻いてから、それを掴むことが出来た。
「掴むことが出来たら……願いが叶うんだっけ……?」
そんなことを、前に誰かから聞いた気がする。
願いが叶うのなら、アイツにもう一度だけでもいいから、会わせてください。
その願いが叶うなら……俺はこの命を捧げたっていい。
だから……──
たかだか桜の花びら一枚に、俺は何を期待したのだろうか。
自重めいた笑みを浮かべて、木漏れ日の差す空を見上げた。
目を閉じなくても、思い出されるのはアイツらといた時のこと。
他愛ないことで笑い合い、くだらないことで言い合って、小さなことにも感動してたあの時のこと。
会いたい……。
でももう会えない……。
なぁ……?
お前は、今何してんだよ?
俺は……お前を探しに、この桜の木の下までやって来たんだ……──
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