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そんな二人の大事な記念日、“彼女である翼の誕生日”に、何故俺が参加しなければならないのか。
完璧におかしいだろうが。
ため息を漏らしつつ、二人へと視線を戻す。
なんでそんなに期待した目を向けてんだよ。
「あのな、そういう行事はふた──
「奏【かな】ちゃん? わたし強制って言ったよね?」
笑顔の翼。
俺の言葉に食い気味で言う辺り、有無は言わさないつもりのようだ。
「だからおかしいだろうが。何が楽しくて付き合う二人の間に俺が入んだよ」
「そうかな? わたしは奏がいてくれた方がもぉーっと楽しいから言ってるだけだよ?」
こてん、と首を傾げて言う翼に、苦笑いを浮かべている颯太。
その顔はつまり、いくら俺が言ってもムダ、というわけか。
「──分かったよ」
呆れ半分、諦め半分。
渋々ながらも、了承を表す言葉を告げれば、みるみる変わっていく表情。
「やった! 三人で遊ぶのって久しぶり!」
「よかったな、翼」
苦笑気味の颯太は、俺に“すまん”と右手を顔の前に出して頭を下げる。もちろん、翼の目に映らないように。
「細かいことはまたメールするね」
「おお。待っとく」
「じゃ、また後でな、奏」
こちらへと手を振る二人に、俺も片手を上げて応える。
笑顔の二人に対し、俺は今、苦笑してる気がした。
──当たり前か。
自分の考えていることに一人で納得し、上げていた右手で頭を掻く。
“付き合っている二人の間に入る邪魔者だから”
それもあるけど、やはり一番は……二人のことを見ているのが辛いから。
子供じみた独占欲なのは分かってるけど、なんとなく……二人との距離を感じてしまう。
中学のころは、いつも三人で一緒に遊んでいたのに。
付き合い初めてからは、俺の知らない二人になっていく気がした。
だから……三人で遊ぶことは避けていたのに。
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