親友

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「なんでもねえよ……」 そのまま不自然に言葉を切られ、何事かと香月を見上げれば、なんとも言えない表情で、俺の背中を眺めていた。 ああ、と納得し、すぐにワイシャツを下ろして体を起こす。 起き上がったと同時に、視線は不自然にそらされ、また一枚の湿布をその手に持っていた。 「ほら足出せ、右足。オレが気づかねーとでも思ってんのか」 その言葉に、素直にいまだ鈍痛の続く右足を差し出す。 そのままズボンの裾をまくり、青黒く変色したふくらはぎが見えた。 無言でそこへと湿布を貼り付ける香月を、ふと見つめる。 背は颯太なんかよりも高く190はあるんじゃないか、というぐらい。それでいて、ひょろりとしているせいか、どこか頼りない印象を受ける。 髪は色素の薄い、天然の茶髪で、癖毛か寝癖か分からない髪はいつもぐしゃぐしゃ。 たれ目がちの目は、どこか優しげな印象は受けるものの、細身の眼鏡で隠れてしまっている。 そして何より、やる気のない、だらしないといった雰囲気が一番強かった。 「はーあ、で? 授業は?」 「香月せんせーはサボり許さないんでしょー?」 ベッドに横になりつつ、そう言えば、香月は軽くため息をつく。 返事も待たずにベッドの中へと潜り込めば、香月も諦めて使った消毒液などを片づけていく。 「ったく。本来なら停学もんなんだぞ? ケンカもバイトも……」 「わかってますよー」 香月の声もいまや半分は耳にさえ入ってこない。 そのまま枕に顔を埋めた。 昨日も──というか今朝までバイトをしてたため、著しい睡眠不足に陥っていたため、眠るのにさして時間はかからなかった。 ────** 「──なー。かーなー」 ぼんやりと覚醒していく頭で、聞こえてくる言葉が、自分の名前だとゆっくり認識していく。 パチパチと数度まばたきをすれば、目に入る見慣れた姿。  
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