無くしたモノ

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「…」 翔太は酸素ボンベや包帯、点滴で見ていられなかった。 「ねぇ…ちゃん…?」 「翔太?!」 侑里は先生との話を思い出す。  『弟さんだけは何とか意識が戻りました。…でも、そう長くはないでしょう。…お話してあげて下さい』   「…っ」 涙が溢れる。泣いたら、きっと翔太は心配する。 そう考えると泣いちゃ駄目なんだ。 「…これ…」 手には強く握っていたであろうくしゃくしゃの小さな紙袋が。 侑里はまさかと思いそっと開けてみた。 「っ!…翔太…あんた…」 中にはリングが入っていた。 「…同じの‥見つからなくて…これで…っ勘弁して、くれよ…?」 なんと儚い笑顔なんだろう。自分は… 「翔太ぁ!ごめ…っごめんね」 「泣かな‥いで…ょ」 翔太は必死に意識を保とうとしている…。 「うんっ。私は…大丈夫だよ…!…翔太、ありがとう!」 侑里は涙を拭うと精一杯笑ってみせた。まもなく翔太は息を引き取った…。   ―――――――   あの時…私はちゃんと笑えていたのかな?
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