女の芽

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いつもの着慣れたTシャツとGパンに着替える。 化粧なんて余りしたことないし、やり方すらわかんない。 一応、100均で買った口紅を引いてみるが… 「似合わない…」 小さなガラスのテーブルの上の鏡を覗いて直ぐにティッシュで拭き取った。 どうせ誰も見てないし、教室にも入らないからこのままでいいや。 何日か前に嬉しそうに持ってきた娘のプリントを拾って眺めた。 開始時刻は10時だと書いてあるが、もう30分も過ぎていた。 また一つ癖になっている舌打ちをしながら、電話に手をやった。 「タクシーお願いします。」 旦那と別れてメリットとデメリットが出来た。 メリットは清々した事と、旦那の給料以上の収入が入ること。 デメリットは両親の監視がますます厳しくなったこと。 この参観日も行かなきゃ、娘がチクるから行かなければならない。 電話をしてから五分も経たないうちにタクシーが到着した。 そして携帯と財布を片手に持ち、かかとの折れたスニーカーを履いて家を出た。 慣れたように運転手に行き先を告げて、私は保育園へと向かった。
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