女の芽

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走り出してからすぐに着いた保育園。 初乗り料金で少し嫌な顔をされた事に腹が立ち、小銭を投げつけるように運転手に渡して舌打ちをしながらタクシーを降りた。 生意気なんだよ、運転手。 ペタペタとスニーカーを鳴らしながら中へ入ると、子供の楽しそうな歌声や騒ぐ声が響いた。 下の子も同じ保育園だから、見に行かなきゃいけないけど。 どうやらそっちの参観はもう終わったらしく、見たことのある子供達が廊下で騒いでいた。 あ~よかった。 面倒事が一つ減った事にホッとしながら娘の教室に足を運んだ。 廊下に張り出された沢山の写真を見ることなく、スリッパを引きずるように教室へ向かう。 娘の参観はまだ続いてるようで、先生の声が響く。 教室の前で様子を伺いながら、携帯を開いた。 あと、何分で終わるんだろう… それを見ていたのか私の前にいた誰かのお母さんが体を寄せて道を作った。 余計な事しないでよ… 中に入んないんだから。 そう思いながら、少しだけ前に体をやっていると 「あっ…すみません。」 と、恐縮しながら私の隣に1人の男性が立った。 ふと横を見ると、スーツを決め込みほのかに香水の匂いを漂わせている志保ちゃんのお父さんだった。 それなりに安定していそうで優しいそうで何よりイケメンな志保ちゃんのお父さん… 私に気付くなり、小声で 「こんにちは。」 と、爽やかな笑顔を向けてきた。 誰も私に挨拶なんてしてこないのに… やっぱり、かっこいいな。
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