5人が本棚に入れています
本棚に追加
黒狐に身体の各部を撃たれ、気を失う事も出来ないまま痛みにもがく標的達。
両軍が撃ち合い、流れ弾の嵐が吹き荒れる戦場と化したこの街では、手負いの子供に誰も救いの手など差し延べてはくれない。味方の衛生兵でさえ……
黒狐をどす黒い感情が満たしてゆく。
痛いだろう。助けて欲しいだろう。お前達の神様にでも祈るといい。
なぁ、宗教ってやつは、そうものなのだろう?
魔眼の射手。
お前が必死で標的の頭を狙っていたのは、そういう事だろう?
せめて痛みを感じさせないように。この戦場で、聖人気取りか?そうして死んだ後は天国ってヤツに行けるのか?
神様に救われるのかよ。
「笑わせるな!」
戦場を進み行く兵達に、天国に行く資格がある者なんか一人もいないのだ。何故ならば、此処こそ地獄そのものなのだから……
その時……射手の位置から銃声が聞こえた。
銃声は六発。
苦しみ、もがいていた、子供達の数。
太陽が真上に上がる頃。
両軍が攻防を繰り広げるこの戦場で、今、
二人だけの小さな戦争が始まろうとしていた……
最初のコメントを投稿しよう!