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大戦中、一人の兵士が居た。敬厳なクリスチャンだった彼は、例え敵兵士であっても人間の命を奪う事に抵抗を感じていた。
せめて衛生兵であれば。……自軍にその願いは聞き届けて貰えなかった。
彼が、狙撃手としての
天性の腕と眼を持っていたからだ。
『魔眼の射手』
それが……戦場で夥しい戦果を上げ続けた彼の、敵味方問わず呼ばれた
呼び名だった。
クリスチャンでありながら人間の命を奪う罪悪感と激しい重責の念で、彼の頭髪はその若さで既に完全な白髪となっていた。
ある日。
進行中の敵地で、
自軍の上層部から彼に
一つの指令が下る。
『敵軍の伝令役を撃て』
その指令は、敵軍の情報の流通を絶つ、効果的な作戦だった……
それは理解出来る。が、
魔眼の射手は心臓を撃ち抜かれる思いだった。
敵軍の伝令役には……
すばしっこくて小さい、
『人間の子供達』が使われていたからだ……
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