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狙撃ポイントは占領した民家の二階の窓。
伝令役は……いた。
銃弾が飛び交い、既に瓦礫だらけになってしまった街中を子供達が駆け回っている。
確かに素早い。魔眼の射手と呼ばれた彼でさえ、その俊敏な動きを捉える事は難しかった。
彼は、後ろに控えている部下に言った。
「……ハワード少尉。
もし私が撃ち誤り、標的を苦しませるような事があれば……その時は少尉、貴殿が私の頭を撃ち抜け。これは命令だ。」
そう言い終わると魔眼の射手は狙撃銃のスコープを覗きながら引き金に指を掛けた。
「一撃。一撃だ。苦しませるような事は、あってはならない。」
独り言の様に呟きながら標的の頭を撃ち抜いていく。
一人、二人、三人。
敵軍の伝令に走っていた子供達が、頭部から血を吹き出して倒れて逝く。
視界が滲む。
スコープが曇っているのだろうか。
いや、原因は違う。
解っていた。
赤く充血した魔眼を見開き、射手は集中する。
が、今度は引き金を引く指が震え出した。
その震えはやがて全身に広がっていく。
静まれ…静まれ!
スコープは四人目の標的を捉えていた。
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