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「くっ!?」
震えた指が誤って引き金を引いていた。
「子供は……」
倒れた標的をスコープで確認する。
まだ生きている。
ライフルから放たれた銃弾は、標的の腹部に命中していた。
倒れた子供は血を大量に流しながら、痛みに苦しんでいる。
「あぁ…すまない…すまない…今…楽に……」
うわごとの様に繰り返し彼は再度狙いを頭部に合わせ引き金を引く。震えは、いつの間にか静まっていた。
スコープで標的の死亡を確認すると、彼は部下に命じた。
「……ハワード少尉。私を撃て。早く。」
それは教えで自殺を禁じられている彼の苦肉の策だった。少尉は腰に下げていた拳銃を抜き、射手の後頭部に押し当てる。
両目を閉じ、今まで奪ってきた命に、そして敬う神に対し、魔眼の射手は贖罪を請う。神よ、私は……
遠くで微かに聞こえた銃声。
少尉は固まったままだ。
「ハワード少尉!何をしている!?命令が……」両目を開け、少尉の方を振り返ると、少尉の額には小さな穴が開いていた。
部屋中に飛び散った鮮血と脳髄。
それは射手にとって、
見知った傷痕。
狙撃によるものだった…
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