運命の二人

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彼女に初めて会ったのは、大学の構内の銀杏(イチョウ)の木の下だ。 古びたベンチに腰かけて、彼女は本を読んでいた。 もうすぐ次の講義が始まる時間だった。 1分でも遅刻した学生は欠席にする、厳しい教授の授業だ。 にもかかわらず足を止めたのは、本から顔を上げて俺を見た彼女の目が、ひどく印象的だったから。 濃いグレーに一滴青をたらしたような、不思議な色のをしていた。 「どこまでも追ってくるのね」 思わず周りを見回した。まさかその言葉が、自分に向けられたものだと思わなかったから。 彼女はなんだか、怒っているように見えた。 でも、唇をむすんで俺を見上げる様子は、静かに本を読んでいるときよりずっと可愛く見えた。 「えーと……俺たち、初対面だと思うんだけど」 思ったより間の抜けた声が出た。 彼女はまだ俺をにらんでいる。 「ひょっとして俺、ストーカーに間違われてる?」 彼女は呆れたように首を横に振った。 全然わかっていない、と言うように。 その通り。 なにがなんだか、全然わからない。 .
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